記念すべき新婚旅行の南イタリアがメインだったような気がする 買い付け日記じゃなくてごめんね 第13回上 ネパールの巻 サムイと南イタリアのおまけつき |
10月1日〜3日 バンコク・サムイ バンコクからローマへタイ航空の直行便がある。 日本からだとバンコクでトランジットとなるが、特に制限の付いたトランジットではないので行きも帰りも長々とタイにいられる。この便を使わない手はないではないか、と言うことで今回はこのチケットにバンコク-カトマンズ間を買い足して旅程を組んだ。 一緒に住み始めて早9年?位になるので、今更新婚旅行でもないのだが、なんとかも方便。 ダーちゃんがサラリーマン生活の中で一生に一度あるかないかの1ヶ月と言う長いお休みを取れるチャンスだものあらゆる言い訳を用意しているのだ。なんでイタリアなのかも、よくわからん。うにのパスタが食べたかったからかな? 同行するはメキシコ買い付け日記でおなじみの桜井(仮名)。新婚旅行なのに友人同行。3人だったら70kgくらい荷物を持って飛行機に乗れる!と思うとウキウキなのだ。 それも自腹で来てくれるってんだから、3人の新婚旅行とてなんの文句があろうか。 と、言うことで私とダーちゃんはタイ航空でバンコク入り、同日数十分の着時間ずれで桜井がバンコク入り。 同じ飛行機でないのは、ビーマンバングラディッシュがなんと36000円だったから!自腹ですから! 週末は市場でかる〜く買い付けし(秋冬物はあんまりタイ関係なし)、その足で夜サムイへ出発。 1ヶ月あるとは言え、1人ずつのやりたいことを並べていくと結構タイトなのだ。 (私のやりたい事はいつもマッサージだけだ。もうどこでもいい) サムイへはダーちゃんがダイビングのライセンスを取りに行く。私も桜井もすでに持っているので、4日間でオープンウォーターを取得すると言うヘビースケジュールをこなすダーちゃんを尻目に、ビーチでごろごろ、えびをばりばり食べる予定。ネットで予約しておいたホテルが空港までお出迎えに来てくれていた。 私の名前のプラカードを掲げていたのは、ハタチくらいの大きな白人の男の子。 私達が滞在するボブットビーチは、その古い漁師町特有の美しい佇まいにノックアウトされたヨーロピアンがたくさんいついてしまった町で、外国人経営のゲストハウスやカフェが数多く見られる。 「●×△☆・・・!」・・・英語なのだがうまく聞き取れない。大きな体の人特有のもうんもうんした声なので英語慣れしてない耳にはぜんぜん聞こえてこないのだ。 やがて彼の所作から、ちょいとおつむがゆるい事が理解できた。なんでもキビキビこなすし、タイ語だってお手のものなのだが(声はもうんもうんしてるけど)、都会生活で生き生きと暮らすのは難しいのかもしれない。 そんな理由でご両親は彼を連れ、サムイへ移住してきたのかもね。 そんなボブ(←勝手に付けた)の案内で、バンガロウへ出発。 実はわたし、タイ人経営のバンガロウを予約したつもりでいたのだ。ヨーロピアン達が憧れる間違ったオリエンタリズムやアメージングタイランドな宿は、「野生で暮らす、水シャワー最高!」とか「とにかく安い、ヒッピー最高!」系のものが少なくない。ネットじゃ経営者がナニジンかなんて全然わからなかった。 空港から程近いその宿は、ひっそり閑散としており、ひしめくバンガロウの真ん中でライトアップされたプールがぼんやりと静かに波立っていた。 客がほとんどいなくて暇なのにも関わらず、エキストラベッドの用意は出来ていなかったので、ボブが予約していた部屋の隣室を開放し「この部屋を使って!フリーフリー」と案内してくれた。 さらに「ウェ〜ルカムドリンク〜」は、何が良いですか?と尋ねてきたので、ビール2本とオレンジジュースを注文。 しかしオレンジジュースのありかがボブには分からず、目にあまる焦りっぷり。 「コーラでいいよ〜」と言うが早いかぴゅーっとコーラを持って来た。 誰だってそうなのかもしれないが、部屋を無料で提供するとか、飲み物をおごってやるとか、人にサービスするってとても気持ちのいいことだ。ボブのハリキリぶりは笑いを誘うほどにかわいく、すっかり私達は彼のとりこになった。 きっとタイ人経営のバンガローにはない、楽しさがあるに違いない。 |
10月1日4〜7日 サムイ 毎朝7:00にダーちゃんはダイビングショップへ向かう。桜井はレンタルバイクで島中を走り回っている。 ボブは従業員を怒ったり、眉間にしわを寄せて悩んだり、はりきったりしている。 私はシュノーケリングを・・・と言いたいところなのだが、何しろ寒いのだ。 毎日毎日、飽きもせずに雨が降る。サムイが本格的な雨季に入るにはまだ1ヶ月ほど早いはずなのに。 本来なら丁度ホテルも一番高い時期が過ぎ、スコールが降ってもさほど気になる程ではないので、 サムイを訪れるなら良い時期なのだ・・・。もう10日も続いていると言う雨に、長期滞在者も嫌気がさしたのか町中がどこかしんとしている。サムイに来て丘で遊ぶなんて考えた事もなかった。 どうしても海を見るとガツガツ遊んでしまうので、まあ本当にのんびりだけするのも悪くないか・・・。 屋台でご飯を食べ、お茶を飲み、晩御飯を食べ、寝るの2日間。 3日目は、タオ島実習のダーちゃんにくっついて行き一緒に潜った。 タオへ向かう船の中では先輩面していろいろ激励していたものの、優しくて厳しい小松先生に手取り足取りされているのは、私のほうだった!もうヤバイ。何もかも忘れている。 「うーん、やっちゃいましたねぇ。ウエア、反対ですよ」はーうーなんとウェアを後ろ前に着てしまっている。 我ながらショックである・・・。桟橋からのジャンプダイブも、キレイに入れずどんごらごっじゃんじゃ〜ん。 得意だったような気がする中性浮力も遥か彼方。突然どういう訳か水面に向かってまっしぐらにのぼっていってしまい、先生とダーちゃんをびっくりさせてしまったりして・・・。とほほ。 その夜のことだった。そろそろ寝ようかと言うその時間、嵐の様な雨の中ドアを叩いたのはボブ。 なにやら興奮した様子でバイクがどうのうこうの言っているのだが、相変わらずもうんもうんしていて何を言っているのか分からない。バイクについて順を追って説明してみる。 「バイクは昨日友人がレンタルしたもので、軒下に止めており、まだレンタル時間を過ぎておらず・・・」と言うと「あいのう〜」とボブが言う。うーん、バイクの出所でもない、置き場が悪いのでもない、じゃあなんだろう。 仕方なく下痢でダウンしている隣室の桜井を起こし、3人でもう一回ボブの話を聞いてみると桜井が「あー!バイク借りたいの?」すると「いえーす!ふぁーいぶみにっつ」とボブが答えた。 「良く聞こえたなあ!」と言うと「勘だよ。へへへ」と桜井。 レンタルバイクの又貸し、それもバンガロウの人に客が貸すって・・・まさにタイである。タイ人じゃないのに。 カギを渡すと嬉々としてボブは去っていった。ずぶ濡れで帰ってきたのは40分後。それもタイである。 タイ人じゃないけど。 帰るとなったら晴天。 清算してから出掛けようとお財布もってレセプションへ。会計表を見てびっくりした。 「ちょっと待って、もう一部屋はフリーだって聞いてるけど」と言うと「そんなわけないじゃんマダム」とレセプションのおばちゃんが笑う。「だって・・・」そうだ、確かに部屋へ到着した日の翌朝、この人に「ベッド用意しますか?それとも今の部屋にいますか?」と聞かれていたっけ。 ボブがタダだって言ってたんですっかりそう思い込んでいたのだけれど、タダだったのは一晩だけだったのかもしれない。それをボブにもおばちゃんにもちゃんと確認していなかった。ここで「だーってボブが!」と言い張れば言い張れたのかもしれないし、それでなんとなく通ってしまうのがタイだったりするんだけどこういう事をボブのせいにしてしまうのは卑怯な気がした。確認しなかった私が悪い。 私が悪いのだから私が払うと言ったが、貧乏な桜井はきちんと全額払ってくれた。 タイに来ると、けしてお金持ちではないのに心だけお金持ちになってしまうので、ついついお金に無頓着になってしまう。いけない癖で桜井に迷惑をかけてしまった。 明日からはネパール。迷惑掛けずにがんばります。 生き方で返していきます(あいだみつを) |
10月8日 カトマンズ イラクでテロリストに拉致されていたネパール人の人質が殺されてしまったこと事を、政府の後手後手対応のせいだ、とネパール国民は怒っていた。投石、焼き討ち、と国民は暴徒と化している・・・と言う。 そのニュースは日本ではあまり流れなかった。気になる・・・カトマンズは注意勧告「渡航是非を検討して下さい」レベルだ。 マオイストによる交通ストライキバンダはこれもうよくある事なので、その程度で買い付けを断念することはないのだけれど、国民がそこら辺でお石を投げたり、焚き火を炊いたりしているのはちょっと怖い。 ネパール馴れした友人達も「うーん」とコメントを控えていた。チケットを押さえることがためらわれた・・・。 毎日様子をうかがう。そうこうしているうちに、外務省の危険情報が「就寝中に部屋に侵入されたり、窓を開けていたところ、外部から釣り竿のようなもので荷物を盗まれたケースが報告されてい」 などの牧歌的なニュアンスに変わってきた。チケットの手配だ。 釣竿で・・・就寝中に・・・うぷぷ。笑える。ネパール人らしい。 ダーちゃんは、何処でも行きたい。何でも見たいと言う。 これは、何処にでも一緒に来てくれて私にとっては面倒がないとも言えるが、彼としてはその反対に興味もない所へいきなり行ってしまうと言うことでもある。 インド系の雰囲気漂うところへ行くには、それ相応のイメージトレーニングが必要なのだなあ、と改めて思ったのは、カトマンズからタメルへ向かう車の中だった。ダーちゃんは完璧に引いていた。ひー その風景は、日本何の予備知識もなく来てしまった人には濃すぎる。これインドだったらもっと濃いけどそんな事はインドを知らない人に言っても何のなぐさめにもならない。 口には出さず気丈に振舞っているが彼はかなり凹んでいる。 凹みついでに、タメルの全様をダイジェストでお送りしようと、ホテルから出るとそのまま市民の市場アサンまで歩いていった。タメルの雑踏から、アサンの混沌へ。 アルミ製品やサリーの生地、野菜に肉、それを見守る神様たち。庶民の生活がみなぎる場所だ。 神様が奉ってある祠の前で、親子が毛じらみを取り合っていた。 ダーちゃんはさらに凹む。それに引き換え桜井の嬉々とした様子よ・・・。 「後でひとりでゆっくりここに来よう!」と元気いっぱいだ。 タメルに戻って一休み。やたら階段をひーこらひーこら上っていく最上階がテラスになっているカフェに行く。 ここいらでは一番背の高い(ヤバイ)カフェだ。タメルが一望できる。 少し距離をとって眺めると落ち着くものよ。 上からネパール人の頭を眺めながら、みんなでモモを食べた。 「やばいやばいー」と言っているダーちゃんにもビールが応援してくれて少し元気になる。 ネパール人と話をするようになれば、違和感もだんだん現実感に変わっていくだろう。 ああ、初めて自分が来た時の事、思い出すなあ。 |
10月11日 カトマンズ 初日から桜井はある男に目をつけられていた。それはサーランギ売りのおじさん。 サーランギとは、ネパールの小さな弦楽器でバイオリンのような物。 ちょっととぼけた日本語でセールスしてくるのだが、「いらないよ〜」と桜井が彼を通り過ぎると 「ほんとに〜?ほんとにいらない〜?!」と薄ら悲しげに、とても後悔を誘うような声色が背中から聞こえてくる。 本当にいらないのに、「ほんとにほんとにいらなかっただろうか」と再確認させられるような声だ。 その声をどうしても無視できない桜井が、つい言い訳のように振り返って「いらないの。いらないよー」と眉をハの字にして答えるのが毎日の日課。おじさんにはそれが面白かったのかいつかカモれそうだったから、どんなに遠くにいても桜井を見つけて嬉しそうに近づいて来る。抵抗する桜井の日本語や笑い声を真似してふざけたりする。これが非常に不愉快で面白い。 ネパール人は目が良い。ど近眼桜井が見えてなくてもおじさんは遠くから手を振っている。 買い物してても現れる。両替してても現れる。 やがて本格的な売り込みはやめてしまい、「友達!」と声を掛けてくるようになった。 誰にでも言ってることだろうけれど、毎日必ず会って話すのでほんとに友達みたいになってきた。 昨日、その彼がいつもと一風変わった様子でやってきて言った。 「友達、コンサートする。見に来て!ほんと!」彼は、逃げる準備万端の私達をなんとか従えて、チケットを売っている日本人の女の子に引き合わせた。サリーを身にまとい、サーランギ売り達に囲まれ楽しそうだ。 この女性えつこさんは、ネパールでサーランギ演奏家の支援をしている。 演奏家とは言っても、いわゆるこのおっちゃんと同じく普段は町のサーランギ売りなのだ。 サーランギ売りにもピンからキリまで。素晴らしい演奏家ももちろん存在するのだが、いくら芸術的でも、彼らのカーストで世に出て行くことは大変困難だ。そこで舞台を国外に求め、多くの人にサーランギの美しい音色を聞いてもらうべく日本でコンサートを行ったりしている。「ここがサーランギの事務所なんです」建物の2階部分を指差して彼女が言う。私はサーランギのちゃんとした演奏を聞いたことがなく、すぐに演奏自体に興味を持つことはなかったのだが、この道売りの人々にもちゃんとした組織があると知ってそれがすごく面白かった。夜、仕事を終えると集まってミーティングしたりするらしい。へぇ〜へぇ〜へぇ〜80だ。 その場でチケットを3枚頂く。 会場は日本食レストラン「桃太郎」。桃太郎の定食から好きなものを選んで、食べながら演奏を聞くスタイル。 定食ディナーショーだ。 演台にあがった彼らはサムンドラと言うバンド。やっぱり「ナマステ〜」から始まる。かわいらしい日本語の挨拶をして、笑いを誘ってから演奏に入る。一音で空気がピリッとしまった。マーダルのリズム、バンスリの囀り、唄うサーランギ。ヒマラヤを仰ぎ生きてきたネパール人ならではの音だ。一曲終わるとまた「ナマステ」。 そしてまた演奏前に「ナマステ」。紙に書いてあるのを読むだけのMCなのだが、リーダーは緊張してしまって、よくわかんなくなってしまう所があった。でもこの「ナマステ」でみんな笑って全て良し。 こんにちは、とも、ハローとも違うこの「ナマステ」は不思議な言葉だ。 やがてどこかで聞いたことのあるメロディーが・・・「あ!りっそんしりりーだ!私のしりりーだ!」と桜井が叫ぶ。 ああ、この曲は桜井が寺巡りの時に、おじいちゃんから教えて貰ったレッソンピリリーだ。 多くの日本人も知っている曲なので、会場中で一緒に歌う。レッソンピリリー♪ 桜井だけりっそんしりりー。演奏とてもよかった。感激してCDを2枚も購入。 「夜、演奏が終わったら事務所に寄ってください」とえつこさんからサーランギ売りのおじちゃんの伝言を貰った。 桜井はホテルで「いいよー、どうせ明日また会うもん」とゴロゴロしていたが、本当は気になっているに違いない。 あんなに「いらない」と言ってたサーランギをいまさら買うともいえないし、絶対買わないともいえないし、もうくたくたなのに、ネパール人ともう一回戦交えるのは限界ともいえるし。 と、言ったところだろうか。結局事務所へは行かなかった。 おじちゃん、待ってたんじゃないかな |
10月13日 カトマンズ 体は重いが、そんな事言っていられない。 荷物を担げる重さに配分して、タクシーに乗り込んだ。これからバンコクへ戻る。 桜井はサーランギ売りのおじちゃんに会えなかった事を気にかけながら、もう一度町へお買い物へ出掛けたが今日はいつものサーランギ売りと違うメンバーが町を出歩いていて、あのおじちゃんには会えない。 タクシーからも桜井は懸命に目を凝らすが、ついにおじちゃんは現れなかった。 空港ではこの多量の荷物に質問が飛ぶ。当然危険物はないし、持ち出し荷物に納税義務はない。 ようは「何なんだ、何故なんだ」の曖昧な質問だ。こんな時、今回限りの印籠登場。 「ハネムーンだから、お土産をいっぱい買ったのよ」 とたんに警備の目が緩む。「いつ結婚した。子供はまだか。なぜ作らないか」それセクハラです。 質問内容は一転したけど、激しさは増したような・・・。ハネムーンマジック。 この言葉にはなぜか誰をもウキウキさせる響きがあるようだ。当の本人達が一番ぴんと来てなくて申し訳ない。 私はたまたま自前のビーズチョーカーを付けていた。ネパールの新妻はチョーカーを付ける習慣があるらしく みんなが私のチョーカーを見て首を横に振る(ネパールではイエスが横フリ、ノーが縦フリ)。 ボディチェックの際も、チョーカーを触られ「ハネムーン?」と聞かれた。へぇ〜へぇ〜へぇ〜 何から何までご丁寧に開けてくれちゃって、元に戻すのが一苦労じゃないのさ。 機内預け荷物の開封チェック後、いつもの手荷物全部出しちゃってどうしてくれんのチェック。 化粧ポーチからライターを発見され没収される。機内預けに回せ!と言う程の代物でもないから諦める。 文句言いながらスルーすると、ダーちゃんががっちり捕まって質問されている。 問題のブツは花札だった。「これはなんだ!」と言う質問に「あ〜ん、ディスイズ、ジャパニーズ、カードゲーム」と、ちょこっとやって見せたりしているではないか。 その様子にわざと大笑いする女2人。大した事ないブツですをアピール中。早く終わらせてください。 バンコクの税関を無事にスルー。悪いことは何もしてないのにひやひやですわ。 明日は荷物を全部日本に送りつけ、いよいよイタリア。 つづきはこちら |