1月29日
昨日、いつものスーパーで若者が喧嘩をしていた。それも私の大好きなお弁当コーナーの前で。ここのお弁当はとっても安いんだがすごいボリュームなので、お腹がぺこぺこの時にはついふらふらと行ってしまう。この日も腹を空かせて猫背になった私が、まっすぐお弁当コーナーへ向かうと、身長178cmはあろう大きな若者2人が「怒」のオーラを放って対峙しているではないか。あー弁当取りづらいと思いつつ近づいてはみたもの、ぱぱっと選ぶっちゅう事が出来ない。種類も結構あるのでいつもすごく悩むのだ。自然に怒りオーラによってじりじりと後退させられてしまった。うちの近所は若者の喧嘩が多いんですがねえ、スーパーで見たのは初めてよ。この諍っている若者、片方は金髪で悪い子っぽいが顔は人の良さそうなのと、顔は端正だがどうにもその前髪はヤバイだろうのオタク君。1.5m離れたお総菜コーナーで耳をダンボにしていると、どうも2人はここで出会ったのではなく、元々知り合いのようだ。恐らく学校とかバイト先の知り合いで、金髪君には前々から積もるお腹立ちがあったご様子。一触即発手が出るか?!と思いきや、ここはおばあの楽園スーパーなのだ。スーパーで殴り合いなんて格好悪いもんねえ。それはよくよく分かっているようで、小さな声で顔を近づけてのにらみ合いだ。2人とも怒りの拳に握られたのがスーパーのカゴってとこが何ともキュートだが・・・。「っつーか、そういうのがうぜえんだよ、行ってくんねえ」「何なの?全然意味わかんねえ」応戦してはいるが、オタク君の顔はまっ黄色。さーっと血の気が引くとはこのことか。カゴを握ってない方の手が、激しくぶらんぶらんして挙動も不審だ。そこへスーパーの店長が通りかかり、「おっ、止めるかな?」と思うより早く、店長の歩く速度は2倍増してレジに飛び込んでしまった。に、逃げた。その背中に「すみません、お弁当選びたいんだけど、喧嘩してて選べないんで、止めて貰えますか?」と、意地悪を言ってやりたくなった・・・。宴もたけなわなのに気が付かないでお弁当を選びに行っちゃったおじちゃんは、気づいたところでちょっとピョンって飛んだ。誰が噂をしたでもないが、そんな風に気が付けばお弁当コーナーを避けるように人の流れが変わっている。その周囲どころか今や店全体に緊張感が漲っているのだ。誰もが見てみない振りをして関わりを避けているが、それはその見てみない振りしている人達の全ての意識がお弁当コーナーに向かっているという事でもある。まさに、いろいろな思念がお弁当コーナーの前にとぐろを巻いている。もちろん私の空腹思念もだ。ああーんもう仕方なく、夕飯のおかずを先に廻り、戻って見るがまだやっている。これじゃ空腹で私もまっ黄色になる!その時、金髪の方の声色が変わり「っつても、お前もアレだよな、ほにゃららほにゃらお前だって堪まんねえかもしんねえしな」、おお?これは譲歩のセリフだ。するとオタク君のまっ黄色の顔が・・ささーーっと赤味を帯びたのである!いや〜!人間て面白いなあ・・・と思っていると、お弁当コーナーに近づきたくても近づけなかった人々が1人2人と寄ってきた!店長がレジから出た!とうふコーナーから弁当コーナーへまっすぐ続くはずの人の流れが戻ってきた!店内中が溶解したのである・・・。たぶん温度も3度くらい上がった。人間ってえ可笑しいわい・・・。金髪君はあんまり選んでいる風でもなく目の前の弁当をカゴに入れると、総菜コーナーへと離れていった。オタク君は平静を装っていつつ、ちょっと汗を拭いた。まだ弁当コーナーから離れられないでいる。2人ともアドレナリンが出てご飯どころではなさそうだ。いやあ実に面白いものを見た。加えて、お腹がすいているときは、喧嘩しやすい、が、人間そうそう長い間怒っていることもできない、と言うことも分かった。
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