財布をすられました

第7回 ベトナム−タイ−ベトナム−タイの巻


 2月26日(火)〜28日(木)ホーチミン太郎

今回は、まず生地を探してからサンプルを作り、そのサンプルに文句言ってから帰るため、
ベトナムから仕事始めをしてサンプル製作の間はタイで買い物、またベトナムへ戻るというプランにした。
チケット的には成田−タイにベトナム行きのチケットを2回追加するかたちになるため、
タイ→ベトナム→タイ→ベトナム→タイとなる。あほみたい!渡航費だってそれで高くなっちゃうしさ。
テロのおかげで航空保険税なんてのも発生するんだよね。
1区間たかが680円なんだけど、6区間も移動することになると4080円!
同じ所を2回往復するだけで6区間カウントになっちゃうのだ。何やってんだろうな〜・・・
しかし、生地を自分で選べなかったり、サンプルを見てから帰れなかったりすると、
後からかえって面倒なことになるのはわかりきった事なのだ。
とにかく、今回はまったくの一人旅。
(普通はいつもそうあるべきなんだけど、私は淋しいので知らない人とでも行っちゃう)だから早々に帰ってこようと思い全行程11日間。かなりタイト!初日はバンコクで降りずにトランジットだけしてさっさとホーチミンへ。
行きのトランジットは3時間ほどだから我慢できるけど、帰りは恐怖の8時間トランジットなんだな。
3時間を体感しながら、やはり8時間はやめときゃよかったかなあ・・・と一人ごち。
その8時間のためにスティーブンキングの分厚い文庫を買ってきた。でも買ったときからもうすぐに読みたくて、
これでは最終日まで持ちそうもないですわ。早朝出発して、ホーチミンの宿には夜10:00頃到着。
飛行機ってなんで座っているだけなのにこんなに疲れるんだろう。

案の定、翌朝起きられず・・・ハンちゃんに叩き起こされ生地を物色に出かけた。
前夜ある程度のデザインを二人で検証していたのだけど、圧倒的な数の生地を目の前にすると何がなんだか解らなくなってくる。ぐるりと通りを一周するだけでお天道様の容赦ない日照りでぐったりだ。
何軒か頃合いの良さそうなお店で交渉をしてみる。話しながらも暑さで半分どうでも良いような気分に・・・い、いかん、いかん。
このお天道様が真上に上がるまでには決定して宿へ帰らねば死んでしまう。
実際、このテトの季節はどこからか涼しい風が吹いてくるし、朝夕は結構いい感じ。
それでもお昼は猛烈に暑くなるので、その時間歩き回るなんて自殺行為だ。生地の山の中をひたすら歩く。
サンプル用に少しずつ少しずつ生地を買っているのに気が付けば凄い量を両手でぶら下げている。
通路は生地で埋まって人一人入れればいいくらいの幅だ。
荷物なんか持っていると周りからも邪魔扱いされるのは必至。
頭に異常な量の生地を乗っけたおっさんが「ほーいほーい」と叫んでぶつかってくる。
懸命によけるがそれでもやっぱぶつかる、これも必至。
その時「山本!」と怒られた。マツモト!にかなり近くて日本語だから、つい反応してびっくるするわたしに、さっきまでむっつりこいてたお店の人たちも大爆笑。「私、松本だからびっくりしちゃった、似てるでしょう」というとまた爆笑。
あっちこっちから「ヤマモト」「ヤマモト」と復唱する声が聞こえてくる。
ヤマモトさん、あなたはいったいここで何をしてたんですかい?
とっとと宿へ帰ってシントーを飲む。うまい!
しかし・・・デタム通り3000ドンシントーファンのみなさん、悲しいお知らせです。シントーは4000ドンに値上げされました。看板はまだ3000ドンです。

翌朝も生地探し。もう飽きてきた。それにしてもオーガンジーなんかがこんなに増えていて驚きだなあ。
夕方は、ハンちゃんと現地で働いている日本人の友達と3人でインドカレーを食べに行った。
ハンちゃんはインディーなミュージックに意地悪な笑みを浮かべている。「あら、良いじゃない、私は好きよ」というと「信じられない」と目を丸くした。だめ押しでインド歌の物まね振り付け付きで責めてやると喜んで逃げてった。
ベトナム人はそれほど辛い物は食べないけど、いつも唐辛子は使うし、とても辛い料理だってもある。
そりゃタイほどじゃないけどね。ハンちゃん額から冷や汗をかきながら、手が震えている。
口もきかないでじっとしている。「え?辛いの?!」すいすいと食べる日本人と辛さに震えるベトナム人。不思議です。
なんでも「辛い」の質が違うそうで・・・。帰りにCHAOCAFEでケーキを食べる。
メーリングリストでもお勧めしてくれてましたよね。現地の人たちもやっぱりお勧めだって。
ちょっとお高めだけど、気取ってなくていいですね。ただ、ケーキの生クリームにちょっとバターが入っちゃっているのは残念。この暑さですから、お国事情ですよね、仕方ないけどさ。ヤオアウ(ヨーグルト)は美味しかったな。皆さんもお試しあれ。



 3月1日(金)バンコク ぶるぶるっ

ホーチミンからバンコクに入りました〜。
到着早々、荷物置くのもそこそこに新しく出来たマーケットを覗きに行く。
ナイトマーケットとは言え、昼からやっている。ただ、噂では昼はかなりやる気がないそうだ。
どうせ私の足では夕方出ても夜になっちゃうだろう。
私は何を勘違いしたのか、ルンピニ公園の中にマーケットが出来たと思いこんでいた。
だからルンピニの中をどんどん歩いていった。
だいたい確認してから行けばいいのにね、っと失敗するたびに思い知るが、そもそも私が持っている地球の歩き方がすごく古いのが良くない。最近の情報は全然載ってない。BTSマップすらない。しかも、古いだけでなく持ち歩いてすらいない。
重いのが大嫌いだから必要なところだけコピーして、マイ旅のしおりを作って持ち歩いてる。
美味しいお店とか、マッサージとかの楽しいコーナーも設けています!マイ旅のしおり(。-_-。)
しかし不測の事態にはまったく対応できません。
で、ただただルンピニ公園の中をどんどんどんどん歩いていったわけ。
ルンピニ公園の中では名物のエアロビクスが始まっていた。なんだか、お祭りみたいで嬉しくなっちゃう。
それも1カ所だけじゃなくて、いろんな団体がそれぞれちょっと離れた場所でガンガン音楽をかけて踊っている。
インストラクターは張り切りレオタード。生徒はTシャツだったり、いろいろだけど老若男女問わずとっても真剣に取り組んでいてかわいい。かなりの迫力と共につい笑っちゃう事請け合いです。丁度私がインストラクターの横を通り過ぎようとしたときだ。
酔っぱらいの(多分公園在住)おっちゃんが、集団の最前列よりももっと前、インストラクターの目の前に進み出て、
ぶるぶるっぶるぶるっと小刻みに震え出したのである。ちょっとテクノな動き、それからゆっくりボーグのスタイル。
 ぶるぶるっぶるぶるっ決めポーズ決めポーズ、ぶるぶるっぶるぶるっ決めポーズ決めポーズ、
もう私は足を止めずに入られない。一方、他のダンサー達はというと、笑うでもなく、邪魔に思うでもなく、
一生懸命踊り続けている。一緒に笑ってくれる人がいない、と言うのは本当に苦しい事で、
ここで私だけが笑ったら全ての人たちに失礼な事になる。もう、この笑わない人たちもおじちゃんも全て引っくるめて可笑しい、ああ、苦しい、我慢だ。緩む口元を悟られないように、とにかく直進、直進。
ルンピニ公園を堪能するつもりじゃなかったのにすっかり堪能した私は、やっと噴水近くまで来て道を聞く気になった。
あの辺だよーと、走り終わったリーマン風のおっちゃんが教えてくれた。そこを目指して歩いていく。
公園の外周は相当距離のあるマラソンコースになっていて、これまたかなり真剣に市民が走り込んでいる。
その鼻息あらい馬が走り回っているようなコースを逆行して歩いてみたり、横切ってみたりする私。危険です。
そして、金網の向こうに見た物は・・・あ、あった。そこでやっと気が付いた。
そう言えば、ルンピニ公園の通り向いって何かに書いてあったなあ。今思い出しても遅いがな。
手に届きそうな距離にマーケットの入り口が見えるのに、今度は公園から出られない。
またしても、マラソンコースを逆行しながら(危ない、危ない)出口を探す。するとどうでしょう。
さっき歩き出したときとほぼ同距離まで歩かなくてはなりません。とほほ。
やっと外へ出て、マーケットにはいると、日も暮れて良いムードだというのに何の活気もありゃしない。
お店はほとんどクローズしてる。なんやねん。私もそうとうくたびれて、それでも見学だけはしっかりとしてるぞと自分に言い訳しながら、どこだかわからない出口を出た。。うーここどこー。
反復運動が脳に心地よいのかなんなのか、足はもう止まらなくなっていて、歩くだけのロボットみたいにどこまでも歩いていくと「ボクシング見ませんか?」と日本語で声を掛けられた。
ありゃりゃあ、ルンピニスタジアムまで来ちゃったのか。
声を掛けてきたお姉ちゃんに、近くの駅を尋ねると、「うーん、無いからバスに乗っていけば?」と
バス停の方向を教えてくれた。これまた相当距離があってがくっとしたが笑顔で手を振りお礼を言い、
バス停に向かっていくフリをした。だって、私が疲れている時にバスに乗ったらまたすごい所に行っちゃうんだもん。
日本でもバスにうまく乗れないんだもん。そう心でつぶやきつつ、せっかくバス停まで歩き着いたのに、
さっと手を挙げてタクシーを捕まえた。バス停のみんなもびっくり。確かに我ながらまったく意味不明。

3月2日(土)バンコク うわーん泥棒!1 

似非バックパッカーあがりの私は、ちょっと高い宿だとすごく落ち着かない。
私の中で高いって言うとどのくらいかというと、2000円以上。ええっ?!ケチンボ!って思う人もいるかもしれんが、
だいたいゲストハウスってのは上で400バーツまでよ。
中途半端な値段のとこじゃどうせたいしてコストパフォーマンスも良くないんだから。
だけど、もう私も大人になったので、いえいえ大金持って歩いてますからそれなりにセキュリティーだけは
確保したいんですね。それで得意だった「留め金一本鍵のお宿」は返上しているわけです。
今常宿にしているところはミニホテル系のところで、ゲストハウスの上2倍します。ひえー!もったない!
毛が生えた位なのにお高くとまっちゃってやな感じ、とは値段見て言っちゃうんですけど、
この時期は学生旅行の連中がいっぱいで、どこに行ってもフルフル。なのにここには毎回登場のラテさんが
住んでいるから、簡単に部屋が確保できるのも便利。そして交通の便がすこぶる快適。
なんと言ってもセキュリティーボックスがあるんですよ。
「仕方ないかー」の心の叫びが「あーよかった、ここに泊まってて」になった瞬間がまさに今日。
別の宿に変わろうか、この宿に連泊してセキュリティーボックスを使うか、使うならいくら預けていくら持って行って・・・
いろいろどうしようかさんざん昨夜悩んだけど、なぜか朝になったら「あほくさ」と思って、さっさ適当な残金とパスポート、
航空券を預けた。デポジットとして200バーツ。変な紙切れを渡されて、この紙を無くしたりボックスの鍵を
なくしたりしたら200バーツは戻せません、と言われ、もめ事は面倒くさいな、と。この紙と鍵を入れてくれよと思ったもの、
こればっかりは入れられん。紙を鍵と一緒にお財布にしまうか、ポケットに入れるか、バラバラにして持つか・・・
考えてカバンの内ポケットに一緒にしまった。いやはや今から思えばこのすべてが不幸中の幸い。

さて買い付け。未だかつて無い混雑ぶりにびっくり!道を行くのが困難なのはいつものことだけど、
渋滞のように長々と立ち止まらざるを得ない事もしばしば。
方向音痴の私はそれじゃなくても時間がかかるというのにー!とても新規のところを発掘する余裕が無い・・・。
でもちゃんと良い物は目に飛び込んで来るんですね〜。
私のバッグ熱に火がついたそのお店を見るや猛然と値段交渉。しかし、高い・・・。
脳溢血か何かで半身がよいよいのマスターはプライドが高いのか、ちび女をなめたのか全然負けない。
しかたない、一回りして戻ってくるか・・・。「じゃ、また戻ってくるから」と言うと「お待ちしています」と丁寧に頭を下げた。
その紳士な態度の中には「戻って来るか?」と言う投げかけがあった。
方向音痴だけど、こういう時は必ず戻ろうと心に決める。だって、これは試されているんだ。
日本のバイヤーなんて口ばっかりだって思われたくない。
道中サンダルを予約し、なじみの店はいつも通りの混雑ぶり。ここはタイ人の女の子にも人気だ。
ざざああっと店ごとかっぱらうつもりで買い込む(でもまだたくさんあるんだけど、気分気分)。
ちょっとアクセサリーも探そう。夏向きのさわやかな石系がいいかな。
一家で営む皮屋の奥には少しアクセサリーが置いてあった。んーでも見るともっと出てきそうだなあ。
店の奥に鎮座して一人女の子を捕まえて値段を聞きながら選ぶ。
誰かが夢中で選んでいると、人というのは急に興味を持ち始めるもんで、私がサクラになったんでしょう
今まで立ち止まらなかった人々の群が店内へ入りだし、たちまちいっぱいになった。
背後からインド人が「俺にも選ばせろ」と言っているのが聞こえてくる。振り返って選び終わった物をインド人に渡した。
インド人はちょっとびっくりしながらお礼を言って物色し始め激しく値段交渉をしていた。
暑い中バイヤーはみんな必死なんだ。うええ、足もしびれてきたしそろそろお会計をしようかな、
と立ち上がってバッグの中のお財布を探した。あれ?あれ?あ、れれれれれ?!
バッグをまさぐると手がバッグの腹からぽんと飛び出た。ありゃ!バッグが切られてる!

息をのんで考える。どうしたらいいかな・・・。
そして、改めて大きな声で「あれー!バッグが切られてるー!」と叫んだ。
いやな話だけど、私はちょっとだけこの家族を疑った。取引も初めてだったし、こんなに店内の奥まったところまで
誰も入って来られないはずだし、怪しい人(インド人か?とも思ったが)が近づいて来た覚えもなかったから。
一家は驚き集まってきた。お父さんが「いくらとられた?」と聞いてくる。
一番上の娘は鼻の頭と額に大粒の汗をかいた顔で私を見つめている。「違うわ、この家族じゃないわ」と私は思った。
彼女の汗に、ごめんねそんな風に考えて、と思いながら「大丈夫、支払いは出来るから」と答えた。
心なしかふるえる手で大金袋からお金を払った。バッグはばっさりと切られていたけどバッグの中からは
お財布以外のなにも盗られていない。タオル、地図、ペン、メモ、そして大金入りの巾着袋、全部残ってる。
相手はどこになにが入っているか熟知してお財布だけ切り目から抜き取っていったのだ。
残念ながらそのお財布は生活費用の物で、あまり大した金額は入っていない。
さっきクイティオナムを食べたときに見たのが最後だったっけ。自分のための買い物もそのお財布からしていた。
犯人はきっとお財布を出したりしまったりする私を見ていて、確信して盗っていったのかもしれない。
または、バッグの上からそっと触ると明らかにお財布の感触があって、そこを切り込んできたのかもしれないし。
道で立ち止まってイラついていた時だろうな。かーっいずれにしても、なああんにも気がつかなかった自分にも、
相手のその技にも驚いたし、なんつったって今まで何回もタイへ来ていてからにこんなオーソドックスな手口にやられたとあっちゃプライドが傷つくったらないわよ。
オケラになった私はさっさと買い付けを終わらせて、宿へ戻ることにした。
あのお財布には現金はちょっとだけどカードが3枚も入っていたのだ。もちろんタイでは引き出し可能。
暗証番号をめちゃ打ちされたってどうせあたりゃしないけど、カードをコピーされたりしたら大変な事になる。
急ぎながら後ろ髪が引かれた。ああ、あのカバン屋のよいよいマスターに一言「明日、来るからね」って
言っておきたかったな。外国人なんてそんなもんだ、って娘に言っているところを想像する。
「ごめん、でもやっぱ今日はもう駄目だ!」いそいで帰ってレセプション総出でカード会社3社の電話番号を調べる。
まさか、盗られるつもりじゃないから番号も控えていない愚かな私。
レセプションで調べきれない分はロビーのインターネットで。
これもそこいらの安ネットカフェと違って高速通信(日本の位ではないけどさ)日本のVISAにやっと
電話がつながって話していると、突然切れた。「ホテルの国際電話は1分いくらで先に買わないといけないから
ミニマムにしておいたんだけど」と申し訳なさそうにお嬢さんが言う。そして「だから外に行った方がいいわよ」と
言うことで(先に言え)表へ走り出る。しかし国際電話ボックスを探すのなんて超面倒くさい。高くても良い!
座って話をさせてちょうだい!と、同じ通りのゲストハウスで電話を借りた。
不機嫌だったそこの受付の女の子も、長居する私が気になったのだろう、やっと目があったので事情を話すと
急に優しくなって、メモや鉛筆の用意をさっさとしてくれた。とにかく走ったり調べたりで3時間くらい時間が経過し、
その電話代が6000円くらいかかってしまって(商品には反映されておりません)なんなんだろうなー
泥棒めー憎らしいーっと思いつつも一通り連絡が終わってまずは安心。

次はツーリストポリスだ。自分のホテルへ戻ってレセプションのお嬢にタイ語でツーリストポリスの住所を書いてもらい、
タクシーに飛び乗った。しばらくすると、「これって、ツーリストポリス?」と聞いてきた。
「そうなのーお財布を盗られちゃって、見てみて!」とバッグを見せた。
こんな犯罪はタイ人にとっちゃ朝飯前なのかと思ってたんだけど、レセプションもドアボーイも屋台のおばあも
リアクションがすごい。「マーッ!!コワイ!!」と身をよじらせる。「およー、怖いねえ」と運ちゃんも目をまん丸にした。
いっちょ急いで行ったろ!っとばかりにアクセルをぎゅーんと踏んだと思いきや、急に止まって、
「あー、近くにあるある、こんなとこまで行かなくてもいいじゃん。ここじゃなくちゃいけないの?」
「いやガイドブックには大きな警察署って書いてあったからその方がいいかなと思って」すると
「あ、それに土曜日休みじゃない?やってるかな!?」と、おっちゃん。
・・・たぶん、警察は休み無いと思うぞーおっちゃん
(タイならありえそうだけどさ)おっちゃんにしてみりゃ遠くへ行く方がお金になるのに、私のためにわざわざ近くの
ツーリストポリスに無理矢理Uターンしてくれた。
にわかにおっちゃん張り切りモードやがて全開、ぶーん、とっても楽しそう。
それーっそれーっと飛ばして行く。でもすぐに渋滞にはまった。おっちゃんしおれた。


3月2日(土)バンコク うわーん泥棒2

おっちゃんしおれても、なんとか無事にツーリストポリスに到着。
入り口には警備の警察官がいて、事情を説明すると何故か嬉しそうに窓口に案内してくれる。
「どうしました?!」と、ジーンズにポロシャツといういでたちの、いかにもそのまま有刺鉄線を飛び越え
ピストルを構えそうな女刑事(実際刑事かは不明)が日本語で飛び出してきた。
日本語でいいらしいので、かくかくしかじか説明すると反応が悪く、素敵な発音だったのは「どうしました?!」
だけだったみたい。ゆっくり説明し、切られたバッグを見せると全員で「うわー」「あれー」「ほえー」なる驚きの声を上げ、
後ろで立っていた制服の男の子なんか「ちっ!くそ〜こんちくしょ〜」なるゼスチャーまで付けてくれた。
詳しく日本語で書きなさい、と調書を渡され、「私が書いて良いのかな」と思いつつ、
分かりやすいようにひらがなで「さいふ」「かばん」など書いていった。
彼女は「書きながら言いなさい」と自分もタイ語で調書を書き出した。なんだ、それなら漢字で書けば良かった。
ひらがなだらけで、とほほ、あたま悪そうだ。そのうち丸めがねで落ち着いた風情の上司らしき人が隣に座り、私に会釈した。
女刑事が「混んだ」って何だ?、などと彼に聞いているので、どうやら彼が日本語のサポートをしてくれるようだ。
「これって、この書き方でいいんですかね」と小声で上司の方に聞くと「うんうん」と微笑んでいるが、
なんだか反応が変。時々、女刑事に私が言ってることを訳している風でもあるが、彼の口から日本語が出ることはない。この人も知ったかぶりか・・・。
そのうちまた窓口へ一人の日本人の男の子が連れられてきた。
やっぱタイなだけにあまりプライバシーへの配慮はなく、隣の席で彼はそのまま事情を説明させられる。
聞くともなしに聞いていると(いや聞こえるんだって)どうもカード賭博詐欺にあったらしい。
「どこへ連れて行かれたの?」「どこでその人達と会ったの?」何を聞かれても答えが今ひとつ芳しくない。
答えが分からないだけじゃなくて、彼女の日本語もうまく通じてないのかな?と思ったおせっかいな私は、
「どの辺に行ったとか、それが分からなくてもどの辺で会って、どっちへ向かって車が走ったか、わかる?」と聞くと、
「いやあ、ディスカバリーの前のベンチにいたんですけど、そこで声を掛けられて、車に乗ったんです。
ずいぶん走ったから遠くへ連れて行かれたと思うんだけど、全然わかんないなあ」と言った。
女刑事は「なになに?」と言うので、それを優しい日本語で伝える。
彼女は「何をしたの?誰は何人の?いくら盗られましたか?相手の電話はわかりますか?携帯ダメ、家の電話」
などと言うが、また反応が悪く、よくわかんないけど日本語から日本語への通訳を首で促される。
そのうち、彼女は彼に向かってなにをか況や「あなた頭悪いよ、日本語で話してるでしょ〜この人(私)頭良いよ
〜すぐわかるよ〜なんで?なんで行っちゃったの?ダメだよ知らない人、馬鹿だね」と
日本語が分からないことと、賭博詐欺にあったこと両方いっぺんに怒りだした。上司は微笑んでうなずいている。
やっぱり変だ。
私の方の事件は、もう、いいのでしょうか・・・「もう、帰って良いですか?」と聞くと「なんで?帰りたいの?」
と言われ「コピーとるからまだちょっと居て、話聞いて」と正式に通訳として座らされたらしい。
しかし、彼のだまされた額はまるまる2日で20万。キャッシングまでして支払ったらしい。
最終日は相手のシナリオ通り待ちに待った馬鹿勝ちをしてみんなを驚かせ、「払いきれないから明日ね」と
携帯の電話番号を渡されどこかへ置いて行かれたのだ。もちろんその電話は繋がらない。
マレーシアホテル周辺に出入りしているバックパッカーの彼はどこから見てもお金なさそうなんだけど、
どんなに貧乏風だってはたけばはたくほどどっかから金が出てくるのが日本人。相手はよく知ってる。
騙される日本人はそれを知らなすぎる。一通り話が終わって二人に「がんばってね」と言って私は席を立った。
「あ、これ証拠はいらないんですか?」とバッグを出すと「マイアオ〜」いらないよーん、と手を振った。
証拠品も押収しないんだ、ふうん。
宿に帰るとちょっとだけ口を利いたことのあるカップルがなにやらロビーで深刻そうな顔をして話している。
「こんばんは」と言うと「ああ、こんばんは、・・・あのう、ちょっと聞いても良いですか?」
私にも聞いて欲しいことがたくさんあるわと思いつつ「なんでしょう?」と聞くと
「もしかして騙されたかも知れないんですけど、いえいえ、もう完全に騙されていると思うんです」
と女の子の方が話を始めた。
なんともはや、こっちは宝石詐欺だ。

 3月2日(土)バンコク 長い一日

 このとってもかわいいカップル。レセプションで使う英語を聞いていたらただ者ではなかった。
音がネイティブなので、びっくりして「英語上手だね」と言うと「あ、私たち日本人じゃないんです」ときた。
二人とも見た目は日本人なわけ。
なるほど彼の方はよく見るとちょっと違う気がしたけど、彼女の方は目を合わせてもシンパシーに少しのずれも感じなかった。なにしろ日本語だってまるで日本人。イントネーションも今時の若者そのものだ。「何人なの?」と聞くと、彼はシンガポーリアンで彼女はキルギス人だそうだ。キルギス共和国!思わず、どの辺にあるの?と聞いてしまいました。
彼女の色素の薄い白い肌や髪、くりくりっとした目はいわゆる日本のとってもかわいい系です。
でも言われてみれば確かに、どこかロシアの影響を受けている感じがします。
昔々、青い目の遊牧民族だったのだそうですよ。さて、話を本題に戻しましょう。
このどこから見ても賢げでしっかり者のカップルは、今日の観光中、
「宝石を買うことでタイの留学生をサポートし、自分も国へ帰って儲けられる」っていううまい話を聞かされる。
購入した金額の一部は奨学金に、その宝石はタイでは安いけど日本やシンガポールでは大変高価なので、
宝石店に持ち込めば5倍〜10倍にはなる、損はしないよん、ってお話。いま一番はやっている詐欺ですね。
最初は「馬鹿馬鹿しい」と思ったらしいが、今度は全然違う場所で同じ話を聞かされる。
最初の人も今度の人も「今日限り」と言っているし、その人はほんとにとってもいい人そうだった、
自分自身が宝石を購入出来て良かった、と嬉しそうにしていたそうだ。
そこでだんだん気になりだして、気構えをしっかりさせてそのお店へ行ってみると、思ったよりもずっと大きな宝石店でしかもフレンドリー。「無理して買わないでね、帰っても良いよ」とまで言う。とても印象が良かった。
とうとう彼女はサファイヤを買う気になってクレジットカードを渡す。
すると、このカードは上限が決まってるからこの宝石は買えない、という。私の知る限りだけど、キャッシングには上限あるけど、借金もなく、ましてや初めて使うクレジットカードに限度額があるなんて聞いたことがない。
彼女はそうなんだ、と思って彼にカードを出して貰う。今度はお店の機械が故障。
「じゃ、これで隣の金屋で金を買いましょう。その金でサファイヤを買いましょう」と言うことになった。怖いですねえ。
もうカード会社に申し出てクーリングオフするにも金しか返ってきません。サファイヤにワンクッション入っちゃった。
責任の所在がはっきりしません。もっと怖いのはカードを2枚も渡してしまったこと。
この時にカードをコピーされてでもしたらもっとえらいことです。サインのコピーも相手は持ってるんですからね!
さて、その宝石はなんと10万円。高い買い物をしたので、シンガポールまでのEMS代はサービスしてくれました。
心づくしのランチもご馳走になり、めでたく商談成立元気にさようなら。しかし帰途でだんだん目が覚めていきます。
二人は宿ではなくてまっすぐツーリストポリスへ行きました。
警察署の入り口には「タイには宝石キャンペーンなどありません」といきなりこのポスターです。
読めば読むほど自分たちそっくりな話。警察官には「これ、やられました」と言うだけで良かったとか。
でも、この時点ではまだ詐欺かどうかわからないわけです。
宝石自体の本当の価値はともかく、購入したい物に納得した金額を払って、それがちゃんとシンガポールに着きさえすれば詐欺ではないですよね。それを開封しないで店に持ち戻り、直接クーリングオフすればいいんです。
しかし、何故かお金は50%も返ってこないんだそうです。なんだか変な話じゃん!でしょ?
つまり警察の説明からすると、宝石以外のサービス実費を返してください、と言ってくるらしいのです。
それは何かというと、コーラ、ランチ、EMS代なんかです。これが5万くらいするって事ですよ。怖いですね〜。
もちろんそんなに高いランチなわけないです。でも物の値段って計りようがないんですよね。そうやって売る人と買う人との相互間で価値は決まっていくんです。勉強になります。「まるで催眠術にかかっているみたいだった」と二人は言いました。
もしかしたら、何か飲まされた・・・かも?しれませんね。
「だってこんなこと、シンガポールのドラマでもよくあって、自分がひっかかるなんて思ったこともなかった」と彼は苦笑します。彼は一生懸命彼女をなぐさめますが、彼女は彼にカードを使わせてしまった罪悪感から落ち着きません。
なんとかしてお金を取り戻そうと頭を巡らせます。が、しかし・・・相手はプロです。50%返ってきて、体が無事に戻ってきたら大オッケーって事にしなくちゃだめだわ。そう言うと涙ぐむキュートな瞳。
そこへ関西人の男の子2人組が「こんばんは〜」っと入ってきた。
大まかに全体を説明し、ついでに私の盗難話も聞いて貰った。彼らはうんうんと大興奮で話を聞いてくれた後、
思い出したように「あー聞いてくださいよ」ときた。なんと君らもか!!
「あそこの角に焼鳥屋があるやんか、だいたいあんなもん5バーツくらいやん、それがなあ、ばばあ25バーツとか言いよんねん。うそこけーっつったら、逆ギレしやがって、ぼられたわーっ」と、心が和みますねえ。60円詐欺事件です。
西風で場が和んだおかげで、家族の話や、これからの旅をクスクスと、ヤング達は(ホテルのロビーなんて健康的な場所で)ついつい話し込むのでありました。



 3月3日(日)バンコク つったかたー

難にあいこそすれ、体が無事だったのですからだいたいオッケーな気分でいましたが、気になっていたことがひとつ。必ず戻ると言ったのに、騒ぎで帰りに寄れなかったカバン屋のおっちゃんの事だ。
きっと、「そんなもんさ」って思ってるに違いない。まず、そこへ行って顔を見せよう。
わたしとて、気に入らないお店にまでいちいち日本のバイヤー代表てな気分で義理立てしたりはしない。
でも、おっちゃんのとこは高くてたくさんは買えないけど、きっと「ままか」に合うと思わせるデザインと申し分ない品質があった。そういう所は大事にしないといけない。てってけてってけ市場を走る。
お店に飛び込むと「ハロー!」とおっちゃんを捕まえた。「待ってたよ」とおっちゃんが無愛想に言った。
でも紳士的でシリアスな無愛想だ。戻ってきたことを評価している、そんな感じ。
おっちゃんは、半身マヒのよいよいだけどインディアンの酋長みたいに静かで強いオーラがある。
私はなんだか「待ってたよ」って言葉で誉められた子供みたいな気持ちになった。
「ごめんなさい、昨日このお店に来た後盗難にあってしまって、急いでカードを止めたり警察に行ったりしてたの」
と言うと、おっちゃんは目を見開いて驚き「I am sorry・・・」と胸の前で手を重ね、頭を振った。
「大変な事をしてしまった、本当に・・・」と。これは残念だったね、のアイムソーリーではない。
私の国の者があなたを傷つけてしまった。本当に申し訳ない。と、おっちゃんは言ったのだった。
私は心底驚いた・・・。こんな威厳を持った謝罪を、今まで受けたことがない。
「大丈夫、たいしたことないの」と私は慌てて答えた。
その時、奥から日本人の青年が出てきた。渋谷の道玄坂でお店をやっているそうだ。
おっちゃんの上客で、うちとは0が2個も3個も違う数のオーダーをしている。
彼曰く「このおじさんはもともとタイ人じゃないんだよ。中東からの移民らしい。まあ、もう何代もこっちにいるから見分けがつかないけどね」と教えてくれた。
移民のおっちゃん、流れて来て苦労しただろうに、タイを愛してるんだなあ、
そうでなければあんな風に謝ったりできない。
私はおっちゃんを尊敬せずにはいられなかった。おっちゃんは彼が大好きらしく、片手でポットを持つとじれったく珈琲を作り出した。私にも座って、飲んでいけ、と言った。嵐のような買い付けは今日が本番。
ここの荷物をまとめたら、もう次のお店に回らなくちゃいけないから、と言うと「何で!飲んでけ!」と何度も言う。
その八の字になった眉間は駄々をこねてるただのおっさんで、とたんにかわいくなって私は大笑いしてしまった。

おっちゃんには申し訳なかったけどやっぱりお茶は辞退して(おしっこも心配なんだ)、小走りにサンダル屋、洋服屋、国際宅配屋と周る。この暑い中を何時間もうろうろすると、絶対翌日動けなくなる。
とにかくウルトラマンみたいに胸のピコピコが点滅したら帰らねばならんのだ。
ぜ〜んぶの荷物をまとめて、軽い物と重い物を分ける。効率よく荷物を送るために出したり入れたり。
最終的には嵩張れど軽い、サンダル類が私の手元に残った。こんなにでかいが、とくに重たくはない。
重たくはないが、ものすごく目立つ。それでもいつものように電車に乗った。
汗だくの日本人、サンタ以上のでかい荷物で車内を占拠し、乗り換えでも易々と持ち上げなんとか狭いドアを出ていった・・・と、うちに帰ったら居合わせた乗客は家で噂しているだろう。してないか。



 3月4日(月)バンコク ボーノ

 今日は発送の日。前もって連絡しておいた卸元から荷物をピックアップして、いろんな方法で日本へ送り出す。
バンコクはだいぶシステムが整ってきているのでこの辺はとっても楽ちん。助かりますわー。
夕方までがんばって急いでホテルへ戻ってシャワーを浴びる。18:00からこっちに住んでる友達とディナ〜。
イタリアンのディナ〜なの〜。ネパールとインドのスパゲッティには大変驚かされるけど、さすがタイはバンコクともなると美味しいイタリアンが食べられます。もちろん、現地の屋台に比べれば高くなるしチップも必要。それでも食べたいイタリア〜ン。
 しかし、待てど暮らせど彼女は来ない・・・。携帯に電話してみようと思う。
私とて、こっちでローカルにかけることは多いのだから、公衆電話くらい使えるわよ。
だのに・・・なぜ・・・駅の電話が使えないの〜。お金を入れてプーって言ってるうちに番号を押す。
しかし・・サイレント。う〜ん、ぬーん、とやってみるがダメ。気が散るんだよなあ!
私の真後ろでクラシックのCD売ってるテントと着信音をがんがん鳴らして携帯売ってるテント!
ツタツタツタっと歩いて行って言ってやったわよ!
「電話かけたいんだけど、うまくできないの。かけて
」おねいちゃんは、携帯を持ったまま早足で公衆電話まで来てくれて、「相手のお名前は?タイ人?」と
聞きながらダイヤルを回してくれた。えへへ〜ミニスカートでロングヘアのおねいちゃんは綺麗で良い匂い。
と思っていたら後ろからトントンと肩を叩かれた。待ち人来たりて。
待ち人時間を間違えて1時間前から私を捜していたらしく、探しに行きすぎて逢えなかったとのこと・・・。
二人しておねいちゃんにお礼を言う。
 サラディーンにあるそのお店は、結構広く白を基調としたインテリアが素敵だ。
毎日氷で作った巨大なオブジェを店に飾っている。もちろんここの厨房で作っているのだよ。
カービングみたくしてるんだろうか。まずはカボチャのポタージュ、それからサラダを食べて、いざパスタ!って
時に話をしすぎてなんだかお腹がいっぱいに・・・ノー。
こんな時も別腹でスウィートなら入るのであった。綺麗にお皿に飾られたミルフィーユと珈琲を戴く。ああしあわっせ。
買い付けがいつもこんなだったらいいのにー。
こうやって小綺麗な場所にいるとまるで日本にいるようだけれど、ちょっと視線を動かすと、各々テーブルに腰をくっつけてなにげに小休止するタイ人のウエイターたち。全員がガラス張りのお店の中から通りを見ている。もちろん口は開いている。
こういう時間の流れはまさに、タイなのだね。
 一歩外に出れば、夜の喧噪のはじまり。あちこちに屋台や土産物屋が並び始める。
彼女は夜のお仕事に、私はホテルへ直帰。一昨日ロビーで話した関西ボーイとデートなのだ。
朝方マーブンクロンにコピー取りに行ったときばったり会って、じゃ、最後だし夜飲もうか(私は紅茶だが、飲むのだ)と言うことになったのだ。どうにもこのオンシーズンで安いゲストハウスを確保出来ないので、もう一度私の泊まっているところへ戻るつもりだといっていた。はっきりと時間の約束をしていたわけではないが、思いの外遅くなってしまったのできっと待ちくたびれていだろう!走れ!いつものカフェに飛び込むと、なんとそこには関西ボーイではなく宿主のラテさんの姿が。
「あれ?戻りは明日じゃなかったの?」と会いざまに言って固く握手する。
彼の隣にはかわいいお嬢さんが・・・前回の買い付けの時にもお会いしている・・・食っちゃったらしい。おいおい。
今までの近況報告だけでもかなりのボリュームだから、閉店まで盛り上がるのだった。お邪魔虫〜。
・・・結局話し相手は見つかったので寂しいことはなかったが、関西ボーイには振られてしまったらしい。
恐らく、離れたところで安い宿が見つかったのか、どこかで酔っぱらってしまったのか、もっとかわいい女の子が見つかったのか・・・。身の危険を感じたのかな〜?ひひひひひ〜
ふーん(泣)



 3月5(火)〜6日(水)ホーチミン こーい

またホーチミンに戻ってます。なーんかい行ったり来たりしてるんでしょうか〜
暖かい国で、夕方に食べない方が良い物、煮豆、だからチェーも朝の方が良いな。
それからヨーグルト、これは朝と夕方で味が違うのでお好みでって感じだけど、昨日のだったらまずアウト。
それから豆腐ね。うっかり忘れて晩御飯に豆腐ばっかり頼んだら、すえた匂いでなんにも食べられない。
ハンちゃんなんか私よりも神経質なんだから、もう箸置いちゃったよ。
友達が来るのを待って、チェーを食べに場所を変えた。豆腐の後にチェー・・・大丈夫なのか!ベトナム!
のシュプレヒコールにもハンちゃん大丈夫!とお墨付き。なるほど、歩いてくるだけの価値はある。
フレッシュで美味しそうな豆の香り。評判のお店らしく、ちっちゃいイスに座り込んでいるのは会社帰りの女の子だけじゃなくて、おっさんから家族連れまでいろいろ。とにかく満席だ。
ハンちゃんはヨーグルトを食べていた。私はナタデココのさっぱりチェー、友達はあんこのこってりチェー。
互いの物をぐずぐずつっつきながら食べるがどれもうまい。目と鼻の先に座っている女の子がなにやら美味しそうな物を食べている。蒸した鳥を細かく割いて、何かのたれをかけて餅米と食べるのだ。ハンちゃんがとりあえず1人前頼んでくれると、お向かいのディテールとは違って漫画に出てきそうな、でかい鳥手羽がどーんと餅米に乗ってきた。向かいの女の子達も思わず笑ってしまう。
「恥ずかしいー」なんて言いながらかぶりつくと・・・うめ〜!にんにくがたっぷり効いてて、ニョックマムの香りがさっぱりした鳥によく合う。この鳥と小さなお茶碗いっぱいくらいの餅米はみごとなボリュームでしばらく歩けないくらいだった。
と、いきなり買い付け日記が食いつき日記になってるけど、ここへ来たら待つしかないのよ〜。
戻ってきて初日に見たサンプルを駄目出しして、その戻りをまた待つ。その間市場やお店に行って小物を見たりする。
しかし、今年は観光客も減ってきたせいかどこもあまりやる気が無くて、いまひとつワンダフルな物が見つからない。
こういう時は無理して買わないの。旅費はもったいないけど。持って帰ったって誰も買わなかったら意味無いじゃん。
かと言って、今更メコンデルタに行っても仕方ないので、毎日買い物には出かけている。
朝早く出てお昼に帰って昼寝、夜また買い物に出て晩御飯。これを2日半続けたらホーチミンはおしまい!
なんちゅう早さ!この待っている時間は、ハンちゃんとアイスクリーム屋で小さくなってうわさ話をしたり、
MTVを見ながらいい男ディスカッションをしたり、マッサージをさせられたり、喧嘩したりする時間。
やっぱり普段顔を見られないので大事な時間。
 そうそう、今回の大きな喧嘩は、サンプルの検品をしているときに、何気なくハンちゃんが
「そう言えば、空港にあつこさんを送りに行ったとき、お金を擦られちゃったんだけど、それは返すから問題ないわ」
から始まったんだ。「なにそれ?もう一回言って?」と解せない私に
「あつこさんも預ける金額をちゃんとメモしてなかったんだから悪いの。おあいこ」と言ったのだ。
私は自分の顔が怒りで青くなっていくのが解った。「問題ないわって何その言い方・・・」
「お金は返すから、問題ないでしょ?」この繰り返し。
盗られた金額は7000円くらい。それはハンちゃんに易々と返せる金額ではない。
「ハンちゃん、私はあなたから絶対にお金を受け取りません。ただ、謝って」
「お金は返します。そして謝りません。私はベトナム人だから、日本人みたいに簡単に謝ったりしない!」
「ハンちゃん、日本人は「すみません、すみません」って言いながら歩くけど、謝っているんじゃないのよ。挨拶で謝るなら私もいらない。でも、人のお金を責任もって預かってもし無くしたら、ごめんなさいって言うんじゃないの?」
「・・・私は!ベトナム人!だから・・・」「ざーんねん!あんたのボスは日本人なんだ!話を聞きなさい!」と
私がさえぎった。しーん・・・。ハンちゃんがぎゅーっと口を結んで黙っている。
そうか、ハンちゃんがここまでがんばるのは、実はすっごく悪かったと思っているからだと私は気が付いた。
それに擦られた事が悔しくてやり場もないのだ。
私のタイ盗難武勇伝はふふ〜んって笑いながら「あつこさんのスウィートメモリーね」なんて言って、
その時はそんな話チラとも出さなかったけど、ずーっと最初の一言と、その「時」を探していたんだろう。
「ねーハンちゃん、ハンちゃんはすごく悪い事したってホントは思っていて、ごめんなさいって思ってるでしょう?」
そう言ったら、目を合わせず、声も出さずにウンと頭をちょっと下げた。
「そしたらそれをそのまま言って良いの。ごめんなさいって。あつこさんは、お金盗られた事を怒ってるんじゃないでしょう?わかるでしょう?」そしたらまたウンって頭を動かして「でも、謝らない!」と宣言し、「仕事を続けましょう」と言ったのだ。
その後ハンちゃんは、その日本人社長との珍事を私の友達(日本人だが)に話してみたが同意は得られなかった。
「お金は返せても、返せなくても、まず最初に謝罪をしなければイーブンにはならないわね」と
ぴしゃーっと言われて、「今度からは、そうします」と、小さい声でハンちゃんは言った。言わざるを得なかった。
でも実は、ハンちゃんは自分で謝る活路を探していたんだろうと思う。
「今度からは、そうします」はハンちゃんのへたくそなごめんなさい、なのだ。
私は、実際に謝るという行為が無くても相手がどう思っているかが解ればそれでいい。
でも、気持ちを隠しておけると思われては、その後本当の気持ちがわからなくなるのがいやなので妖しい時にはひどくしつこい。誤魔化したらしつこい奴だと思われていたい。迫力無いながらも威圧してやるー!
・・・こういうねばっこーい、濃ーい人間関係でままかの服は作られています。うんざりでしょう。はははははー


 3月7日(木)ホーチミン 日本人の貧しい血

 さて、ホーチミン最終日、デタム通りのカフェでハンちゃんと、まるで何もなかったかのように(ホントに)いちゃいちゃしながらカフェスアダーを飲んでいると、目の前にいた日本人の男の子が倒れた。
周りには友達がいるみたいだったから、どうせ酔っぱらってしまったんだろうと思ってしばらく見ていた。
そのうちベトナム人が慌ててタイガーバーム持ってきてこめかみをマッサージし始めたので、なんのため?
と思って、つい帰り際に「どうしたの?」と声をかけてしまった。
すると、うーわからないんですけど、急に目の前が真っ暗になってーと言う。「お酒飲んでる?」と聞くと、ふーいいえー、ほとんどー、だそうだ。それって貧血じゃないのかな?周りの子たちはおたおたしていて心もとない。
中にはバスの出発時間になってしまって心配そうに「さよなら!」と行ってしまう子もいて、ますます心細そう。
どうやらみんな道連れ仲間らしく、お互いのことをそれほど知っているようではなかった。
ベトナム人のウエイターは「飲み過ぎだ!」と言いながらまだこめかみを激しく押している。
飲み過ぎだと思うならやめて君、それはつらい。「あの、貧血じゃないかと思うんだけど」と私は言うと
「貧血ってどうしたらいいんですか?」と皆の衆。あらま、普段とても健康なんだわね・・・
男女合わせて5人くらいいて誰も貧血経験がないなんて、うらやましいやら珍しいやら。
「朝礼の時にパタンて倒れるのいたでしょう、あれあれ」と言うと「あー、見たことはあるけど」と、あれあれほんとに珍しいな・・・。「あの、横になっちゃいなさいよ。彼の膝に頭乗せさせて貰って、そうすると血が戻ってくるから」
倒れた彼は、ごめんなーと言いながら横になるとあーと楽そうな声を出した。
「風邪引いてない?」と聞くと、あーわからないけど、うーこんなことなったことないんでそうかもーと言った。
「昨日の水シャワーのせいじゃない?」と女の子が言う。
確かに、暑い国でも体が冷えているってことはあるからね、そんな時、疲れてて水シャワーだと泣きっ面に蜂って事になりかねないのよね。「血が戻ったらタクシーに乗って帰って寝ちゃいなねー」と言って私はホテルに戻った。
後ろではタクシー代問題を話し合う声がしてた。「poor bloodよ」とハンちゃんに言った。直訳「貧血」。
去年ハンちゃんがよく貧血になって、なんだろう〜これ〜、と言っていたのだが、その時はなんて言ったら通じるかと悩んだ末にダイレクトにそう言ったのだ。以後二人の中ではすぐ分かり合えます。(本当はanemiaです)
「あつこさんてば人が良いから、すぐ顔つっこむんだから」と、ハンちゃんのおケツが私のおケツにぶつかってきた。
やれやれ、私が彼女のボスになれる日はいつの事やら。



もうけっこう
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