第18回 台北・バンコク・チェンマイ うまい物は最後にとっておけ 最新はこちら |
2007年 1月29日 台北 まぁ出発前からちょっと調子も良くなくて、オマケに電車を一本逃したうえに、降車駅を間違え、 空港に着く前からハラハラ走ってばかりいたのもよくなかった。 更にエバー航空のプライベートモニターで見た映画は「1リットルの涙」で、泣くのを我慢するのが大変。 もう台北空港からタクシーに乗る頃には頭がガンガン痛かった。 またまた更に運転が荒くて胃が振り回され、その後渋滞・・・。「具合悪りぃ〜〜〜!!!」と、後ろの席で 斜めになったまま意識不明に。吐きそう。 台北はどうもホテルのコスパが悪い。かなりお金を出しても大したことはなく、安いと連れ込みや お化け屋敷ばかりだと言う。そこで、久しぶりのゲストハウスだ。 私が選んだGHは女子専用。日本に留学していた女の子がオープンしたのだそうだ。 運転手も焦る位、シートからずり下がって窓に顔をくっつけていた私を出迎えてくれたのは そのご本人トゥリナさん。お金を払ってフラフラとタクシーを降りる。タクシー高いなぁ・・・と思いつつ。 ああ、早く横になりたい。作り笑顔で「今日は疲れました、では」みたいな事を言ったのだが、トゥリナさんは 聞いているのか聞こえないふりか「紹介します」とまっ黄色の顔した私を伴って台所へ。 紹介って?他の宿泊者たちへだろうか? 「食べた物の残りはここへ捨ててください。ペットボトルはここです。それから・・・」 トゥリナさんの声が遠くに聞こえる。ああ、これは紹介ではない。説明である。 電気のスイッチから洗濯機の使い方、洗濯物の干し方、お風呂の使い方、部屋の使い方、有料アイテム、 ありとあらゆる説明をされているのだが、それ程私は頭がよくない上に具合が悪いのだ。 分かった事は、とってもルールがたくさんあって、どこまでも清潔なこの宿の中は地雷原のようであること。 いつ何時ルールを侵してしまうことか、先が思いやられる。 「湯船を使ったら、湯を捨てて、軽くスポンジで洗い流してください」共同風呂なのだから当然そうしたと思うが ルールになったとたんに気が塞ぐ。 少し休んでから、みずえちゃんと明日の予定をミーティングするためスタバで会う事になった。 みずえちゃんは、もともとままか立ち上げ当初からのお客さんだったのでずいぶん長いお付き合い。 いつの間にかすっかり仲良くなり、結婚式にも来て貰った。 そのみずえちゃんの夫君が最近台北に駐在している。だから彼女もちょくちょく台北に遊びに来ているのだ。 今回は偶然にも買い付けと日程が近かったので便乗。 みずえちゃんも、夫が働いている間は一人で街を彷徨っているので、お仕事を手伝ってくれると言うし いやはや、何を食べるのも二人ならいろいろ食べられるしとっても楽しいよ←こっちがメインか? 管理室にいるトゥリナさんと目が合ったので手を振り、玄関と通じるその管理室の部屋内に入ると 「あ、そこ、押してください」とピンポンを指差した。それもここのルールなのだ。 ゲストハウスエリアから玄関へ行く途中にある管理室、ここを通る時には必ずピンポンすること。 わかっていたんだよ。だけどもう目が合ってるんだからいいかなっと思って・・・・とは言わずに ごめんなさいと言って出掛けた。さっそく踏んでしまった地雷。まさにルール地雷原である。 |
2007年 1月30日 台北 台湾について語るべき事と言えば、食べ物のこととトゥリナさんのことだ。 そのくらい、食べ物が美味しい。そしてトゥリナさんはおかしい。←漢字でない事に注目。 楽しみな朝ごはん。 「熱米梁」とある。お粥だと思って頼んだら、なにやら茶色い液体がどんぶり一杯出てきた。 |
||
これである↓ |
||
わぅ〜なんなんだろう、これ。 恐る恐る食べてみると・・・ん!覚えのある味。 きな粉であ〜る。きな粉汁なのであ〜る。 ほんのり甘くてとても優しい味。まだまだ肌寒い台北の朝に温かさが沁みる。 うーん、美味しいねえ!と盛り上がるも たちまち 「こんなには食えない、いや、飲めない!」 ハーフがあったらランチでもおやつでも参加したいが。 そして昼ごはん 牛肉麺 |
||
これである↓ |
||
手前が汁なしのジャージャー麺、奥が汁ありの牛肉麺。言うことなし。もう最高。 麺は刀削麺を使っているので、シャーシャーっと麺が飛ぶパフォーマンスも普通に見られる。 腰が強く、まずスープが旨い。 おやつである。 何が素敵って、台北はカフェが素敵なのだ!! 喧騒をしばし離れて木立の中、タイワニーズは尻が長い。いつまでーもお茶するのだ。 台湾には一口ずつ驚かされる。本当に何を食べても心尽くされていて美味しい。 屋台だろうが、カフェだろうが、新鮮で、熱いものは熱く、冷たいものは冷たく、茹で加減も、塩加減も 甘さも、絶妙なのだ。何が素敵ってそういう事が当たり前ってこと。だから何を食べても美味しい。 毎回美味しさにびっくりするのだ。 例えば台湾料理ではない、このケーキだってしっかりとしたレモンの酸味と濃厚なチーズがベストマッチ。 そしてタロイモのケーキと、凍頂烏龍茶。お茶も概念を覆す美味しさ。↓ |
||
そろそろ、今日は観光なんだなぁとお気付きか?いや、だんだんそうなっちゃったのだから、仕方あるまい! 寺を見て、疲れ果て、また喫茶店へ。 今日はみずえちゃんの夫むーと、その友人陳さんと晩御飯をご一緒するのであるが、若干時間が余り、 これ以上腹を満たすわけにもいかない我々は床屋を探した。台北へ来たらやはりシャンプーしてもらわないと! シャンプーの方法はベトナムと同じく、お客さんは普通に座ったままで雑誌などを読みふけり、 美容師さんが器用にも髪以外濡れないように洗ってくれるってやり方だ。 おびただしく、たっぷりとシャンプーを使うので、地肌がパリパリになるに違いない。やだな!いや楽しみだな! 溢れるほど美容室だらけの国なのに、探すとないのはどういうことだ。 やっと入れたお店は、なんと洋式のシャンプー台がある!うーん残念ながら横になってシャンプーだ。 しかしおびただしいシャンプーの量は変わることなく、そしていつまでもいつまでシャンプー液付けた ままマッサージしてくれるので、やっぱり地肌はパリパリになった。そしてご丁寧にセットまで完璧にしてくれる。 あたしなんか蛯ちゃん風にデジパーかけてたもんだから、セットが大変!←自慢ですよ、奥さん。 私達、台湾人と日本人は同じ漢字と言うワードを持っているのに、何故か言葉が通じない。 道を歩いていても自然に字は読め、意味が分かるので、言葉を伝えねばと言う緊張感を持たずに 人と相対してしまう。そのもどかしさは、他の国では味わえない感覚だ。 パーマ屋の兄さんは観光客におもねることなく台湾語一本やりで「どうしましょうか」と言っている。たぶん。 その台湾語の中に聞こえてきた「ちゅるちゅる」と言う言葉。カールのクルクルに違いない。 ちゅるちゅるしますか?って事だろう。おお、デジパーだからセットの必要ないんだけど、デジパーの 概念はまだ台北に来ていないらしく、説明も出来るわけなく、「はい、よろしく」と言ってしまった。 そしたら、も〜う、申し訳ないくらいに丁寧に丁寧にちゅるちゅるして下さる。 間違いなく待ち合わせには間に合わない。ショートヘアのみずえちゃんに先に行ってもらい、 走って走って遅刻で晩御飯へ。初めての方々とお会いする晩御飯に、なんだか夜の匂いがしそうなくらい ゴージャスヘアを振り回しながら遅刻して来る女なんて、もうまったくもってダメである。本当にお恥ずかしい。 しかし人間くよくよしたって仕方がないので、とにかく気を取り直して鍋のタレを作った。 ああ、食べるのに夢中で晩御飯の画像がありません。 酸菜白肉火鍋 すっぱい白菜と豚肉の鍋。 発酵させた白菜をたっぷりと特性スープの鍋へ投入。豚のばら肉やマトンをしゃぶしゃぶして一緒に戴く。 これまた旨い! ブラブラしながら五駅ほど歩いて宿まで送って貰うことに。駅と駅が近いのだ。 数ヶ月に一度しか会えないみずえちゃんとむーは仲良さそうに並んで歩いていて微笑ましい。 私は日本語ペラペラで日本通の陳さんと、寅さんのネタなどで盛り上がりつつその後を行く。 陳さんは、これまた別途ページがいるほどの個性派である。 宿へ到着し、手を振り別れて行く私を見て「ああ、牢獄へ帰るようだ」と言っていたらしい。 文字通り、出迎えてくれたトゥリナさんに収監されていく私。 明日は、トゥリナさんの仕事の事情で、19時半まで外出しているようにとの事。 この宿は、通常も11〜17時までトゥリナさんが不在のため戻って来てはいけないのです。 好きな時にひと休みしに戻れないのは、仕事だとちょっときついんだよね、正直。 「ごめんなさいね、ごめんなさい」と謝るトゥリナさんに、そうは言えないのだけど・・・ 完全ホスト主導型ゲストハウスなのだ。 それで一泊一人3200円程するんだから、宿は全体的に高いんだよね。タイならホテルに泊まれるよなー もちろん、この日も髪の毛一本落とさずに入浴後、寒さに震えながら就寝。 |
2007年 1月31日 2月1日 台北 いきなりだけど、台湾に行ったらこれを食べなくちゃダメ。 「胡椒餅」 餅とは言え、日本の餅とは違う。薄く香ばしいパンだ。 手のひらいっぱいのお肉と葱を、このパン生地で薄〜く、くるりと包む。 パリパリ香ばしいパン生地と中の胡椒が効いたお肉がベストマッチ。 肉汁で火傷をするほどのアツアツ! ↓御覧なさい。ナンと同じ要領で焼くのだ!! |
||
ナンと同じスタイルの焼き方 |
出来たよ!!アツアツ〜 |
危ないくらいの肉汁注意!! |
不思議だ〜 この島国に過去たくさんの国が訪れたのだろうね。台湾人が食いしん坊だから、すぐに他国の食べ物を 自国の物と融合させるのか、オリエンタルな物が目に付く。ドネルを饅頭に挟んだのも美味しそうだった。 日本の占領下にあった頃の名残で、天ぷら、おでん、などオリジナルから進化した台湾料理も多い。 夜近くまで市場を回って靴などを買った。重さも限界が近づくと好きな時間に戻れない宿がにくい。 気が付いたのだが、宿にはいつの間にか私しかいないようだ。 みんな厳しいルールに辟易したのかい?私には行く所がねえんだもん。 人気もなく、寒さが沁みる夜なのだ。みずえちゃんも泊まりに来て、他に誰もいなくて、気が大きくなった 私は、廊下を暖めているヒーターをちょいと拝借して部屋に置いてみた・・・あ、あ、暖かい。 トゥリナさんは潔癖症なのだ。朝はバリバリとけたたましい音を立てながら髪振り乱してペットボトルを 潰したりしているその様は、ちょっと怖い。とても人当たりも良いし、大人しい人なのだが、ルールは絶対。 キレイに掃除された部屋やホコリひとつない流し台には、試供品や無料のティッシュなどを備えており 洋服や髪型からもほのかに吝嗇の気配もする。台湾ではめちゃめちゃ珍しいタイプらしい。 ヒーターひとつで気が気じゃないので、早々と元の位置に戻した。 明日は荷物を出しに郵便局へ行く。近いけど重さを考えればタクシーで行くしかない。 恐らく、トゥリナさんにタクシーを呼んでくださいなんて言ったら「歩いていけますよ!」即答されるだろう。 翌日、みずえちゃんと一緒にタクシーで郵便局へ。 案の定、出掛け際に「えーっとタクシーを・・・」と言ったら「すぐ近く、歩いて行けます!」と即答された。 思わずトゥリナさんから目をそらしうつむいたみずえちゃん。冗談の予測がどんぴしゃで当惑しているのだ。 「重いので持てません」と言ってみたけど、納得はして貰えず・・・ずっと小さく首をかしげて「そんなのは 問題外」って顔していたなあ。仕方なく荷物を引きずり通りまで出て自力でタクシーを拾う。 タクシーの運ちゃんも「すぐそこだよ!」って笑って言いながらも、荷物を見て快く乗せてくれ、 入り口のギリギリまで運んでくれた。 床に這いつくばって梱包し、手続きしてる頭の方でじいちゃんが携帯で電話をしていた。 ちっちゃいじいちゃんが器用に携帯を使うのを見て「あらら、かわいいなぁ」とみずえちゃんと笑った。 そしたら、そのじいさんがすたっと椅子から立ち上がり「お手伝いしましょうか」とやって来たのだ。 関東総督府時代に陸軍軍曹をしていたのだ、と胸を張って言う。日本語はイントネーションも完璧。 それだけ厳しい日本語教育と抑圧があったに違いない、と思う私は、日本人と話すことが嬉しくて みずえちゃんの手を離さないじいちゃんの笑顔とは裏腹に、複雑に乱れてしまう。 「その節はすみません」じゃ軽すぎる。「日本の為にありがとう」じゃ肯定的過ぎる。でも何か言うべきだ・・・ 咄嗟に「よくぞご無事でいて下さいました」と口に出た。意外にも気持ちとぴったりフィット。 そう、本当に生きててくれてありがとう。こんなにかわいい人が日本の為に命を落とさず生き抜いてくれた事に 私が感謝をしたいのだ。自分の家族の写真や、当時の思い出の写真などをお財布から出して見せてくれる。 お別れに、甘納豆とバナナとパパイヤをくれた。 持ってるものを何でも良いからくれてやりたかったのだろう。 晩御飯の夜市でみずえの夫むーと再開し、その話しをすると 台湾人の日本びいきは本当に凄くて、当時の事も含めて楽しかった事のように話す人は多いのだと言う。 恨みつらみを持つ人を圧倒して親日派が多い。むーも「久々に日本語が話せる!」と嬉しそうな年寄りに 捕まるんだそうだ。確かに・・・何処へ行っても優しくされたなぁ・・・ ファッションやアートを見ても、ヤング達から今の日本がとても支持されていることがわかる。 そしてまた、日本語を話すおばあちゃんやおじいちゃんも、一様に目を細めて私達を見る。 嬉しいけど・・・ちょっと困るのだ。 だって、その愛に見合うだけの愛を日本人は持っているだろうか。 その憧れにそぐうだけのものが日本にあるだろうか。 じいちゃん達には、感謝もせず謝罪もせず今まで来たことを謝りたいし、若い人達には今の日本の様には ならないでね、と言いたい。だってよその真似なんかしなくても、台湾かなりいい感じなんだもん。 最後の夜である。 みずえちゃんがいなくなったのに、まだ気が大きかったのか私、廊下からまたヒーターを拝借して 荷造りをしていた。その時、ヒーターを点けると同時に帰ったはずのトゥリナさんが、部屋へ来た! やばい、中を見せるな!後ろ手に扉を閉めて「なんですか?」と聞くと「えーっと飛行機は、 どこの飛行機ですか?何番ターミナル?タクシーに伝えます」そう言えば、さっきタクシーについて やり取りをしたっけ。この人は宿の経営者なのにエアポートバスの時間表も持っておらず、 タクシーの時間には別の場所にいて部屋の引渡しにも立ち会えず、なんだかうやむやにお別れを言った のがほんの数分前。コートを着て出て行った様に見えたのだが、反省して戻って来ちゃったのか? 「エバー航空ですよ」と言うと「それはエバーグリーンですか?エバーグリーン?」そうだけど・・・ ちょっと待ってて工程表を見せてあげるから・・・ともう一度部屋に戻って扉を閉めると 「あっ!」とひときわ大きい悲鳴を発した。しまったー・・・ついに気付いたか。 トゥリナさんは潔癖症なので、いつもの場所に同じ物が同じ様にないと、とってもイヤなのだ。 その上ケチなので、温度設定をいじられるのだってイヤに違いない。 「すみません。ちょっとタオルを乾かしたくて、寒かったし。すぐに元に戻します」と部屋にヒーターが 在るのを見せた。「それ、それヒーターじゃないですよ!」と言っていたけど、意味がわらかなかった ので「すみません、すぐに元に戻します」を連発・・・ 後味の悪い最後になったわ・・・。 今でもルールと言えば彼女の顔が浮かぶ・・・ いったいあれはヒーターでなくなんだったのか?今では知る由もない。 |
||
とにかく、美味しい国だった。 |